製品情報LCD(液晶)製品 : パネル・モジュール・グラフィック・キャラクター等
LCD(液晶)とは
液晶そのものの歴史は古く、1888年オーストリアのF.ライニッツァー (Reinitzer) らにより、植物から採取した有機化合物からなる結晶を加熱することで液体状となる相転移型の液晶が発見されました。固体と液体の2つの性質をもつということで、「液晶(Liquid Crystal)」と命名されています。その後、70年以上を経て、1964年には米国で液晶表示装置としての応用が考案されました。さらに1968年には米RCA社の開発者の手で最初の液晶表示装置が試作され、以降、多様なモノクロ表示装置が考案されました。1973年には日本で初めて電池駆動が可能な電卓の表示装置として採用されました。
その後、STN型液晶による低消費電力で薄く小型のディスプレイが開発され、電子手帳、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機など、低消費電力を要求される電子機器の表示部として普及しました。日本は液晶の応用分野でNo1の確固たる地位を有していました。その後LCDの材料や周辺要素、ICなどの開発が進み、CRT代替としてのカラー化に開発の方向が移行しました。1983年には日本の諏訪精工舎(現セイコーエプソン)から、世界最初のTFT型液晶カラーテレビ「ET-10」が発表され、翌年に発売されました。1988年には14型のTFT型液晶カラーTVが発表され、1990年代になると技術開発がさらに進み、TFTによるアクティブ・マトリクス駆動の高精細表示が可能になりました。 1990年代半ばに低温ポリシリコンによるさらに高精細なTFTが実用化され、用途も静止画だけのデジタルカメラの表示部のようなものから、動画が表示できるデジタルビデオカメラの表示部へと広がり、ノートパソコンの表示や小型テレビ、カーナビへと用途が広がりました。その時代には日本メーカーのそれまで蓄積した基礎研究や技術開発の実用化・製品化が進み、世界市場を開拓していきました。1990年代半ばに韓国メーカーが、1990年代後半には台湾メーカーが世界市場に本格的に参入してきた結果、価格競争が激化し、市場のシェアにも変化が生じてきました。2000年代では、小型の表示器としては携帯電話やPDA、携帯音楽プレーヤー等の多様な携帯型電子機器に使用されるようになり、現在ではスマートホンへの搭載が加速されています。その間、タッチパネルのような周辺機器も大きく用途開発に寄与しました。大型では薄型、軽量の特長を生かした大画面テレビや普及型テレビなど、ブラウン管の代替のディスプレイとして採用されました。
1964に米国で表示装置としての応用が報告されてから、約50年の年月を経て、現在、最もポピュラーな表示装置として確固たる地位を築いています。
LCDパネルに関して
特徴
LCDパネルにはブラウン管のような自発光の能力はありません。対向電極を形成した2枚のガラス板の表面に液晶分子を並べる処理(配向処理)、ラビング工程を経た後に2枚のガラスをサンドイッチ構造とし、その間に液晶材料を封入して作成します。大きさの相違はありますが、基本的にはすべてこの構造となっています。対向電極に電圧をかけることによって、液晶分子の方向を変え、光の透過率を変化させることで像を表示することができます。液晶自体は発光せず、明るいところでは反射光を、暗いところでは背後に付けたバックライトの光を使って表示を行います。
大きく分けてTN方式やSTN方式などの単純マトリクス方式と、TFTなどのアクティブ・マトリクス方式があり、前者の方が安価だが表示品質は後者の方が格段に良いです。液晶ディスプレイはCRTディスプレイやPDPなど他の表示装置に比べて、薄形、軽量、低消費電力なので、携帯用機器や省スペースが要求される電子機器によく使われています。
用途
民生機器、産業用機器を問わず、広範囲に使用されています。特に、小型、軽量、低消費を要する分野では、よく使用されています。例としては、デジタル置時計、腕時計、電卓、玩具、健康機器、医療機器、車載用ラジオ、ハンディ通信機器、ハンディ計測器、家電(リモコン、エアコン、電子レンジなど)等が挙げられます。
仕様
7セグメント表示のLCD、 およびシンボル、アナウンシエータなどが表示でき、暗所でも見られる必要性から、バックライト付きの仕様が要求されます。客先からスペック提示されるカスタムのものが多く、それぞれの製品の機能を表すパターンが配置されます。LCDのモードはTNかSTNで、駆動電圧は3〜5Vの単一駆動で、客先のCPUに内蔵されているLCDドライバを使ってコンパクトに表示する製品が多いです。車載関係の仕様では、広温度範囲品や湿度に強いLCDが要求されるため、仕様の取り決めの時には、十分客先と調整する必要があります。LCDの特性にかなり精通しておく必要があると言えます。
LCDモジュールに関して
特徴
実際、LCDに画像を表示させるためには、対向する電極間に電圧を印加しなければなりません。その機能を果たすのがLCDドライバ(IC)ですが、コントローラも内蔵したコントローラドライバも半導体の技術が向上するにつれて、開発が進んできています。表示する画素数が128x64ドット程度まではコントローラドライバの1チップ構成で、それ以上に画素数が増えてくるとコントローラとドライバが分離された構成のものが多くなります。
このドライバ/コントローラ、LCD、その他受動部品とLCDを1つにまとめて実装したものをLCDモジュールと呼んでいます。モジュール形態にした場合、CPUや外部インターフェースLSIと接続することにより、画像データやインストラクションの書き込みなどが簡単に行えます。
さらに、PCB上にLCD駆動用のDC-DCコンバータやLEDドライバなどを実装すれば、単一電源の動作も可能となります。一般的に実装方法の違いから、下記の3つの方法があります。
- (1) COB型 (Chip On Board)
PCB上にコントローラ、ドライバ、DC-DCコンバータ、LEDバックライト、LED ドライバなどを実装するタイプのモジュールです。LCDとPCBのコンタクトはゼブラゴムを用います。コンパクト性には欠けますが、一体型で、すべての機能を盛り込むことが可能となります。特に産業用の据置き用途の機器に多用されています。 - (2) COG型 (Chip On Glass)
ドライバをLCDガラスのITO上に異方性導電膜を介して実装するタイプのモジュールです。外部とのインターフェースはFPCを用いて行います。COB型と比較して軽薄短小の構成が可能となりますが、受動部品はLCDガラス上に実装できないので、外付けとなります。このため、ユーザー側で電源部分やLCDのバイアス回路を準備する必要があります。しかしながら、ドライバをベアチップのまま実装可能であるため、コストメリットがあり、中小型のLCDモジュールでは最も採用されている方法です。 - (3) COF型 (Chip On Film)
ポリイミドのフィルム状基板に直接LCDドライバを実装して、LCDパネルとCOFを熱圧着で接続する実装方法です。ドライバのベアチップをTABラインであらかじめ実装しておくため、フィルムの材料費分にコストがかかります。中小型よりは、大型のTVなどの実装に用いられる方法です。
用途
LCD単品用途を除く、ほとんどすべての電子機器に採用されています。
- (1) AV機器:TV、プロジェクター、デジタルビデオカメラ、デジカメ、BRレコーダ
- (2) OA機器:ノートPC、モニター、コピー機、FAX
- (3) 通信機器:携帯電話、多機能電話、ハンディターミナル、POS端末
- (4) 車載機器:カーナビ、スピードメータ、カーオーディオ、航空機用メータ
- (5) 健康/医療機器:体温計、血圧計、血流計、温度センサー
- (6) アミューズメント機器:テレビゲーム、携帯ゲーム機、パチンコ、スロットマシン
- (7) 家電:エアコン、電子レンジ、電子ジャー、冷蔵庫
- (8) パーソナルアシスタンス機器:スマートホン、タブレット、PDA、電子手帳
仕様
- (1) LCDコントローラ:内蔵型/非内蔵型
- (2) モジュール構造:COB型、COG型、COF型
- (3) インターフェース:パラレル/シリアル/I2Cバス
- (4) 3V/5V単一電源:LCD駆動用DC-DCコンバータ内蔵
- (5) バックライトオプション:LED (白色/YG/アンバーなど)、EL、FL
- (6) タッチパネルオプション:抵抗膜式、または静電容量式
- (7) LCD:STN、およびTFT
LCDグラフィックに関して
特徴
細かい、多数の正方形の画素をマトリクス状に並べて、それらの点灯・非点灯でパターンを表示するのがグラフィックLCDです。これをさらに細かい画素を増やして、RGBのカラーフィルタを付ければ、8色の表示が可能となります。さらに、1個1個の画素に諧調を付ければ、その諧調数に応じたカラー表示が可能となります。グラフィック表示の利点は、セグメント表示やキャラクター表示のように決まった文字ばかりではなく、どのようなパターンでも表示が可能な点です。その分コストもアップするので、用途によってLCD単体の白黒表示、単色のキャラクター表示、グラフィック表示、カラー表示、フルカラー表示などの使い分けを考える必要があります。
用途と仕様 (画素数により分類)
- (1)モノクロ128x64〜240x160ドット程度:漢字+シンボル表示、簡単な画像表示。画素が粗いため、あまり細かい表示には向かない。ハンディ製品の決まった表示を確認する程度の用途に向いている。(例 ハンディターミナル、POS端末、FAコントローラ等)
- (2)〜320x240(QVGA)は現行のモノクロ画素数の最大のスペックとなっている。これ以上の画素数となるとコモンライン数の増大に伴うコントラストの低下が問題となる。産業機器のように供給期間が長い場合、コンパチ品の置き換え需要があるだけなので、新規に開発してラインアップするような製品ではなくなっている。用途はコピー機、FAX(業務用)、FA機器(据置き型)、キャッシュレジスター、宅配用ロッカーなどに使用されている。
- (3)320x240ドット以上になると、現在はTFTが主流である。小型2.4インチ程度から、60インチ、100インチといった大画面TVに採用され、価格はモノクロの5インチ程度のものより安価で入手性の良いものがTFT製品にラインアップされてきている。
用途は現行の電子機器に使用されているカラー表示はすべて、TFT表示と言っても良いと思われる。例としてはテレビ、PC、スマートホン、タブレット、携帯電話、プリンタ、コピー機、カーナビ、デジカメ、など。タッチパネルとの組み合わせにより、用途はさらに向上している。
仕様
- (1) LCDモジュール構造 :COB型、COG型、FPC型、など
- (2) 画素数:64x32、96x64、122x32、128x64、128x128、160x160、192x32、192x192、240x128、240x160、320x240 など
- (3) 表示モード:FSTN、STN YGモード、STNグレーモード、反射、半透過、透過
- (4) LEDバックライト:白色、イェローグリーン、アンバー、他
- (5) 作温度範囲:ノーマル品 0〜50℃ 広温度範囲品 -20〜70℃
- (6) 保存温度範囲:ノーマル品 -20〜70℃ 広温度範囲品 -30〜80℃
- (7) LCD用昇圧回路内蔵:3〜5V単一電圧駆動
- (8) 中型モノクロでは抵抗膜式タッチパネルのオプションをラインアップ
LCDキャラクターに関して
特徴
アルファベット、数字、シンボルなどを1文字で5x7ドット+カーソルの形式で表示し、16文字x1行、20文字x2行、40文字4行といった文字数でLCD画面上に文字列を表示するのがLCDキャラクターモジュールです。キャラクター表示であるので、グラフィックと比較して表示文字に自由度はなく、あまり多くの内容を表示できません。多くの内容の表示を要求されない製品には数多く採用されています。
LCD、PCB、ドライバなどが一体化されたモジュール構造となっていて、外形サイズ、ピン配置などが特定メーカーの製品が雛形となり、それに準じて各社のラインアップが成されています。従って、搭載されているコントローラ/ドライバが共通であるため、インターフェースもほぼ共通化されています。ピン配置なども機種ごとに同じため、メーカーの型番違いの製品であっても、コンパチブルとなっている場合が多いです。
従って、1社がディスコンになっても、他社のもので対応可能な製品を推奨することができます。産業機器市場のようにモデルチェンジが少なく、供給期間が長期に渡る場合でも供給可能となっています。
用途
オフィス用電話機、FAX、OAプリンタ、据置き型の計測器/通信機器、FA機器など幅広い分野で採用されています。
仕様
- (1) LCDモジュール構造 :PCB型、COG型、など豊富な外形バリエーション
- (2) 画素数:8桁x1行/ 2行、16桁x1行/ 2行/ 4行、20桁x1行/ 2行/ 4行、24桁x2行、40桁x2行/ 4行など
- (3) 表示モード:FSTN、STN YGモード、STNグレーモード、反射、半透過、透過
- (4) LEDバックライト:白色、イェローグリーン、アンバー、他
- (5) 動作温度範囲:ノーマル品 0〜50℃ 広温度範囲品 -20〜70℃
- (6) 保存温度範囲:ノーマル品 -20〜70℃ 広温度範囲品 -30〜80℃
- (7) LCD用昇圧回路内蔵:3V単一電圧駆動